―ホットトイズはどのように、今回のプロジェクトに参加したのですか?
2、3年前に『ケルベロス・サーガ』(※1)の版権元であるバルクの廣瀬氏と
1/6スケールフィギュアのカスタマイズで高名なKAZ氏よりアプローチを受け、
「プロテクトギアのフィギュア製作に興味はありますか?」とお話をいただいたのがきっかけです。
ホワードと私は『ケルベロス・サーガ』の大ファンだったので、大喜びでお引き受けしました。
―企画スタートからどれくらいの日数がかかりましたか?
また、どのように進めていきましたか?
2011年にプロジェクトがスタートしたので、製品のプロトタイプが完成するまで
約3年の月日を要しました。
進め方としては、まず竹谷隆之氏(※2)と彼の造形チームがプロトタイプに取り掛かり、
それを韓国に送ってもらいました。
製作していただいたプロトタイプはスタチューの状態だったため、
どのようにこれをホットトイズの可動式フィギュアにフィットさせるかなど、
多くの議論と調整を重ね、現在に至ったわけです。
―最初にプロテクトギアのオリジナルデザインを見たときどのように感じましたか?
「素晴らしい」の一言です!
『ケルベロス 鋼鉄の猟犬』のプロテクトギアをデザインされた末弥 純氏(※3)は、
大の中世騎士の甲冑ファンでいらっしゃって、そこに第2次世界大戦の軍服の要素を加え、
このプロテクトギアに昇華させました。
後の東京、首都警につながる、『ケルベロス・サーガ』のプロテクトギアの源流を
見事に描かれていますよね。
私はこのデザインそのものが「素晴らしいアクション・フィギュア」であり、
またとても機能的な甲冑であると思っています。
―ホットトイズ初のプロテクトギアになりますが、こだわった点を教えてください。
新しく開発した塗装技術です。
この独特な塗装によって、ライティングや角度の違いなどで、
時にはメタリックに見え、また時にはマットにも見えるような、
本物の金属なのでは?と錯覚いただける仕上がりになっています。
実際にご覧いただければ、きっと塗装の美しさを感じ取っていただけると思います。
また石畳を再現したジオラマ風の台座も、目玉の一つです。
『ケルベロス 鋼鉄の猟犬』は、第二次世界大戦下のヨーロッパが舞台となっており、
戦争がどれほど悲惨なものか、ということを掲示している物語です。
政府は兵士にプロテクトギアで武装させ、危険な戦場へ送り込み、
そしてたくさんの人々が国のために戦い、亡くなっていきました。
そういった1人の軍人が抱く重圧感や、戦争によって生まれる悲劇的な側面を、
台座に踏襲したつもりです。
こういった部分を手に取って感じていただけると嬉しいですね。
―製作するうえで、挑戦した部分は?
関節と可動部分が一番の挑戦でした。たとえば、武器を持たせる際、
左肩のアーマーが可動の邪魔になってしまいます。
そこで、我々はアームを簡単に動かせるよう、肩アーマーを2層式にするなど、
工夫を凝らしています。
―最後にファンの方々へ一言お願いします。
本アイテムはホットトイズの製作チームだけでなく、
日本や韓国からの沢山のアーティストに参加していただき、
素晴らしい努力によって誕生しました。
多くのファンの方々にこの芸術ともいえるフィギュアに触れていただき、
心ゆくまでお楽しみいただければ幸いです。
(※1)『ケルベロス・サーガ』
『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー the Movie』などの作品で監督を務めた、
押井守氏原作による、『ケルベロス』シリーズの総称。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本がドイツ軍に占領される、
という史実とは異なる世界が舞台の、架空歴史物語である。
実写映画、アニメ映画、コミック、ラジオドラマといった
様々なメディアで展開されている。
(※2)竹谷隆之
1963年北海道生まれ。
モデルアート社を経て、1985年頃よりフリーの造形作家として活動をはじめる。
卓越した造形力と、独自の解釈で描かれるデザイン力で高く評価されている。
ホットトイズとのコラボレーション企画である【アーティスト・コレクション】にて、
日本の伝統的なサムライスタイルと西洋のポップカルチャーアイコンを融合した、
「サムライ・プレデター」を手掛けて、
今回はラジオドラマ『ケルベロス 鋼鉄の猟犬』(2006年)の為に描かれた
末弥純によるイメージ・デザインを見事に立体造形化:モデルスタチューとして製作した。
(※3)末弥 純
1959年大分県生まれ。
ゲーム作品である『フロントミッション2』『ファイナルファンタジーXI』や、
ファンタジー小説など、さまざまな作品のキャラクターデザインやイメージイラストで
高い評価を受けているイラストレーター。
押井守の指名を受けてラジオドラマ『ケルベロス 鋼鉄の猟犬』の
プロテクトギアのイメージ・デザインを見事にまとめあげた。
立体化した竹谷隆之も「全くストレスを感じないデザインだった」と賞賛したのである。